法人・会社の私的整理とは?手続きの流れやメリット・デメリットを解説

法人・会社の私的整理とは?手続きの流れやメリット・デメリットを解説

会社の経営状態が悪化し、借入金が返済できなくなった場合は「私的整理」をおすすめします。

私的整理は債権者との交渉によって借入金の負担を軽減できる上に、費用を抑えられるというメリットがあります。

そこで今回は、法人・会社の私的整理について手続きの流れやメリット・デメリットについて解説します。

法人・会社の私的整理とは

法人・会社として債務整理を行いたい場合、「私的整理」と「法的整理」から選びます。

法的整理は裁判所で行われる倒産手続きを意味します。

具体的には「破産」や「会社更生」などがあります。

一方、私的整理は裁判所を通さずに債権者との交渉によって債務負担を軽減する手続きです。

具体的には「私的整理ガイドライン」や「事業再生ADR」などの手続きがあります。

債権者の同意が得られた場合はすぐに手続きを進められるので、法的整理よりもスピーディーなのが特徴です。

研究員:柳沢
中小企業の精算・再建する手段としてよく選ばれているのは私的整理です。
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手続きの流れ

私的整理には進め方に法的な制約がないため、当事者間での話し合いだけで進めていくことも可能です。

大まかな流れは以下の通りです。

私的整理の流れ

  • 弁護士と事前打ち合わせ
  • 金融機関に債務減額などの要請
  • 事業再生計画の策定・可決
  • 事業再生計画の実施

相手の合意が得られるまで数ヶ月から1年程度かかる場合があります。

円滑に進められるように、実績豊富な弁護士や公認会計士に依頼しましょう。

私的整理のメリット

私的整理のメリットを分かりやすく説明していきます。

私的整理のメリット

  • 取引先や顧客にバレにくい
  • 柔軟・迅速な対応を期待できる
  • 費用を節約できる

このメリットは法的整理よりも私的整理が選ばれている理由でもあるので、チェックしていきましょう。

取引先や顧客にバレにくい

私的整理の大きなメリットは、取引先や顧客にバレにくい点です。

通常、法的整理を行う場合、すべての債権者に知らせなければならず、官報にも掲載されます。

この公告は信用情報調査会社のホームページや紙面にも掲載されるため、取引先や一般消費者に知られてしまいます。

会社の経営状態が悪いことが明らかになれば、金融機関と取引を継続できなくなったり、取引先との契約が停止になったりすることもあるでしょう。

しかし、私的整理を行う場合は、債権者との交渉により解決を進めます。

すべての関係者に知らせる必要はなく、官報への掲載もありません。

研究員:柳沢
取引先や顧客に知られずに借金問題を解決できるのです。

柔軟・迅速な対応を期待できる

私的整理は、柔軟・迅速な対応が期待できるというメリットもあります。

私的整理では債権者と債務者の交渉により内容が決定するため、個別の事案に応じた再建計画の策定が可能です。

例えば「こちらの銀行には借入金の返済猶予を求める」「こちらの銀行には借入金の減免を求める」など債務の解消や再生を目指しながら、事業継続を図ることができます。

また、裁判所を介さないため手続きが迅速に進みます。

債務整理にかける時間が削減できれば、その分事業再生に取り組めるでしょう。

費用を節約できる

法的整理では裁判所に予納金を納める必要があり、負債額に応じて数十万〜数百万を用意しなければいけません。

事業継続が難しい状態なのに、そんな大金を工面できない…というのが現状でしょう。

一方、私的整理では裁判所での手続きが不要なので予納金も必要ありません。

弁護士など専門家に支払う報酬は必要ですが、法的整理に比べて費用を抑えられます。

資金を経営再建へまわせるので、再建計画の策定に余裕を持たせることもできます。

私的整理のデメリット

私的整理はメリットが大きいように感じますが、デメリットも存在します。

メリットだけでなくデメリットも理解した上で検討しましょう。

債権者の同意を得るのが難しい

私的整理では、債務者が債務整理の再生計画を提示し、債権者と交渉して同意を得なければいけません。

しかし、借入金の返済延期・減額などを提案している訳ですから、金融機関がすぐに同意してくれるとは限りません。

債権者が同意しないために債務整理が進められず、手続きに数年かかってしまうリスクもあります。

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透明性・公平性への懸念

法的整理においては、裁判所が手続きを監督するため公平性が担保され、手続きの透明性も高いとされています。

一方、私的整理は裁判所の関与がないため、手続きの透明性や公平性について懸念されます。

私的整理を行う場合は、債権者と債務者による交渉によって手続きが進められます。

債権者にとっては再生計画に不満を抱くかもしれませんし、プロセスに透明性がないことに不安を感じる場合があるかもしれません。

まとめ

今回は、法人・会社の私的整理について手続きの流れやメリット・デメリットについて解説しました。

私的整理のメリット

  • 取引先や顧客にバレにくい
  • 取引先や顧客にバレにくい
  • 費用を節約できる

経営状態が悪化して借入金の返済に困っている場合には、私的整理を検討しましょう。

金融機関との交渉によって借入金の返済延期・減額など負担を減らせますし、まわりに気づかれる心配もありません。

法的整理よりもコストを抑えられる点もメリットです。

しかし、透明性や公平性についての懸念もあり、債権者の同意を得るのが難しいので注意が必要です。

研究員:柳沢
私的整理について興味がある方は、まず弁護士に相談することをおすすめします。